謔、とどうせ同じことなリンピイ!
そこには、マルガリイダもPIMPもなかった。強い海の The Call と、視界外への慢性的な放浪心とがあるばかりだった。
海から来た彼は、その誘惑に負けて故郷へ帰ったのだ。自発的に「上海《シャンハイ》された男」なんて、この古いインクの水にとってもはじめての実見だったろう。とにかく神様と文明のほかに、また一つリンピイがりすぼあ[#「りすぼあ」に傍点]を見すてた。着のみ着のままでリンピイは行ってしまった。|暗黒の海《マアル・テアネブロウゾ》へ!
SHIP・AHOY!
海には海だけに棲《す》む独立の一種族と、彼ら内部の法律と道徳と生活がある。この小別天地を積んだガルシア・モレノ号が、ひょいと過失的にLISBOAの岸へ触れて、その拍子にわがリンピイを掠《かす》め去ったのだ。僕には、大きな未知のほんの瞥見だけを残して――。
いま亜弗利加《アフリカ》の西を南下しつつある The Garcia Moreno のなかで、まるで古|葡萄牙《ポルトガル》の民族詩人ルイス・カモウエンスがその海洋詩LUCIADUSのなかで好んで描写したような、何と途轍《とてつ》も
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