sつら》の皮だ。もっとも、ほんとに仏蘭西製のこの種の豪の女《モノ》が世界じゅうに散らばってることも満更《まんざら》うそ[#「うそ」に傍点]じゃあないんだが、その多くは、女中つきで倶楽部《くらぶ》なんかに出没するグラン・オペラ的な連中で、このぽるとがる国リスボン市ばいろ・あるとあたりで船乗りの相手をしてる「ふらんす女・巴里《パリー》っ児《こ》」は、テレサをはじめ、このとおり十中の十までFAKEである。へんな話だが、こんなことで国際聯盟あたりが仏蘭西に嫌味を言ったりするんだから、ふらんすにとっては飛んだ迷惑だろう。だいたい仏蘭西の女、ことに巴里女《パリジェンヌ》なんて、そんな原始的に荒っぽい冒険家じゃあないんで、たとえば巴里市内の娼婦だって、大部分はチェッコ・スロヴァキアの女・波蘭土《ポーランド》の女・ぶるがりあの女・葡萄牙《ポルトガル》の女なんかなんだが、それらのすべてが、この「自称ふらんす女」と同一の心理と理由から、本場の巴里では、言い合わしたようにことごとく「西班牙《スペイン》女」と自己広告することにきめてるから、面白い。つまり巴里の売春婦で眼の黒い女・碧い女・茶色の女・髪の毛の黒い
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