浴Eそれほど黒くもない女・むしろ赤ちゃけた女、要するにすべての女が、すこしでも外国めいた点地《タッチ》があると人工的にそこを強調し、どう捜しても無いやつ[#「やつ」に傍点]は仕方がないから無理にも作って――自由な仏蘭西《フランス》語を商用としてだけ御丁寧に不自由らしく片ことで話したりなど――どれもこれも、先天的俳優能力をもって器用にすぺいん生れに化けすましてしまう。だから仏蘭西の名誉としちゃあ、ここでまあ幾らか帳消しになる勘定かも知れない。BAH!
ところで、問題は「ふらんす女」テレサだが――。
そのテレサが、身体《からだ》ぜんたいに白粉《おしろい》を塗りこむ。
何のためにそんな莫迦《ばか》なことをするかというと、「マルガリイダの家」では、船員を招いて博奕《ばくち》をさせ――これはいつも船乗りらしい簡単な歌留多《かるた》の勝負にきまってたが――そして単に賞品として、勝った男に一晩のテレサをあたえるという組織だったから、言わばテレサは、この場合一個の物品に過ぎない。したがって、それを目的に金を賭けるくらいだから、客のほうも前もって詳しく現物を見ておきたい。なんかと権利を主張するかも
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