Aそれは直ちにわがリンピイのような港の売春宿の御亭主《オウルドマン》を意味する。だから、リンピイは若いくせに老人《オウルド・マン》だった。
PIMPという一つの職業がある。
リンピイはそれに従事していた。
何かと言うと、これは、不思議に女性の肉だけを食べる人喰い人種のことで、妻だの娘だの情婦だのの肉を切売りして衣食している。もっとも、こんな身辺の女肉だけじゃあ需要に応じ切れないから、そこで、あらゆる方法で女を駆りあつめるんだが、この、専門の売春婦を養成して一定の契約のもとに各地へ配給する問屋制度に、昔から有名ないわゆる白奴交易路《ホワイト・スレイヴ・トラフィク》なる秘密工業がある。と言うと、莫迦《ばか》に十九世紀的にひびくが、この事実は、いまも国際的「|底の社会《アンダアワウルド》」の暗黒を貰いて立派に存在している。現に、国際聯盟の「世界悪」退治運動の重要項目の一つに上げられてるくらいで、パンフレットを発行したりして妨止に努めてるけれど、いくら国際聯盟あたりが躍起になって騒いだって、それは単にその暗流の実在を公表するにとどまり、何ら直接|刷掃《さっそう》の資にはなるまい。と思われ
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