Rから山へべらぼうに巨大な水道の橋を築いて渡したもので、この、可愛らしい人智幼年時代のあとが、連々たる大石柱の遺蹟として車窓に天を摩《ま》している。すると葡萄牙《ポルトガル》だ。何という真正直なろうま人の努力!――なんかと感心してる僕の視線を、ほるとがる荒野の石塀とコルクの樹とゆうかり[#「ゆうかり」に傍点]と橄欖《かんらん》と禿山と羊飼いとその羊のむれが、瞬間に捉えて離した。石塀は崩れかけたまま重畳《ちょうじょう》する丘の地肌を縫い、コルクの木は近代工業の一部に参与している重大さを意識して黒く気取り、ゆうかり樹は肺病を脅退《スケア・アウェイ》するためにお化けのように葉と枝を垂らし、かんらん[#「かんらん」に傍点]は葡萄牙《ポルトガル》国民唯一の食品オリヴ油を産すべく白く威張って並び、禿山は全国を占領し、羊飼いは定住の家を持たずに年中草と羊と好天候を追って国境から国境の野原をうろうろ[#「うろうろ」に傍点]してるもんだから、よく殺されて有金《ありがね》と三角帽と毛皮付きいんばねす[#「いんばねす」に傍点]を奪われ、その殺したやつがまた直ぐに三角帽をかぶりいんばねす[#「いんばねす」に傍
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