ヘあ! いろいろな笑いごとに何と古めかしく派手な LISBOA !
 この週期的活気・海と陸との呼応・みなとのざわめき[#「ざわめき」に傍点]によって早くからきょうガルシア・モレノの入船《いりふね》を感づいた僕は、仲間《パル》のリンピイから預ったしっぷ[#「しっぷ」に傍点]・ちゃん[#「ちゃん」に傍点]鞄《ケイス》をすっかり用意して、それでも、マストの先の青い星がともるまでぼんやり待っていた。それは、かねての契約どおりに、僕がひとりでリンピイの鞄を下げてその新入港の船へ乗りこみ、甲板に品物を拡げて、当番の乗組員《クルウ》相手に商売する。リンピイはリンピイで例のほかの種類の商品を積んで、僕が呼ぶと、あとから船へ上ってこようというのだ。そこで僕は、リンピイの鞄と暗黒と一しょにがるしあ・もれの号へ漕ぎ寄せてみると、長い大西洋《アトランチコ》を済ました船員達は、上陸番なんか無視して誰もかれも「七つの丘の灯」へ逃げてったあととみえて、船尾《スタアン》の綱梯子《ジャコップ》が公然の秘密のようにこんなにぶらぶら[#「ぶらぶら」に傍点]していた。ボウテをつないで、僕と鞄がそのじゃこぷ[#「じゃこぷ」に
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