ぎ寄せる――とこういう手順だが、どうせこのほうは、まあ、小手調べのつもりだし、こっちでも幾らかの利を見たいなんてそんなリンピイでもないから、持ってく日用品なんかちっとも売れなくても困らないんだけれど、それが妙なことには飛ぶように売れて、リンピイはいつも空《から》の鞄と、反比例に充満したぽけっと[#「ぽけっと」に傍点]とを伴《つ》れて陸へ帰るのがつねだった。じゃあどうしてそうリンピイの商品に限って捌《さば》けが早かったかというと、それは何も彼の小売的商才の致すところではなく、現在あとで僕がこの役目を受持つようになってからも、品物だけは何らの渋滞なくどんどん[#「どんどん」に傍点]売れてった事実に徴しても判るとおりに、商品それ自体に、「これに羽が生えて売れなければベイブ・ルースは三振してカロル親王殿下がルウマニアの王位に就く」と言ったふうな、リンピイ一流の|狙い《ヒット》と仕掛《卜リック》が潜ませてあったからだ。では、その手品の種は?――となると、これが本筋の「|何か袖の奥に《サムシング・アップ・イン・ゼ・スリイヴ》」の重要な一部なんだから、手法の教えるところに従い、僕としてはもうすこし
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