た窓があるが、シェレイが快活な表情と輝かしい眼とで、本を手に、朝から晩まですわっているのがおもてから見えたというのはここだ。鳥籠と餌入れと水がないだけで、まるで若い貴婦人に飼われている雲雀《ひばり》が、日光のなかで歌うために出窓へ吊るされているようだと当時近処の人が陰口をきいたほど、この半月街の窓とシェレイとは離れられないものになっている。つぎのクラアジス街三番邸には一時マコウレイが住?ナいたことがあり、三二番はよくバイロンが訪問したので有名だし、ボルトン街にはドュ・アブレイ夫人のいた家があり、そこの玄関にしばしばウォルタア・スコットの姿を見かけたそうだし、チャアルス街四二番はボウ・ブラメルの住宅だったし、ボンド街は倫敦のルウ・ドュ・ラ・ペエだし、アルブマアル五十番は、この屋根の下でバイロンとスコットがはじめて会っているし――そうしていま、そのメイフェアの西端パアク・レインに、弁天小僧の、切られ与三《よさ》の、直侍《なおざむらい》の、とにかく日本KABUKIの「たちばなや」が印度大名《マハラジャ》のごとき国際的意気をもって雄々しくも――フジヤマとサムライとゲイシャの芸術国から――乗り込
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