轤フ懐疑も反逆もなしに受け入れている敬愛する英吉利《イギリス》人の道徳律《モラリティ》を呼吸していると、私は正確に、死期を逸した陰険な老猫を聯想する。親切と誇示癖と利用本能。何があっても昂奮する神経を持ちあわさない倫敦《ロンドン》人。その鈍いおちつき、救われないひとりよがり――AH! 私のろんどんは瑕《きず》だらけな緩動映画《スロウ・モウション》の、しかもやり切れない長尺物だ。テンポのおそい荘重なJAZZ――この滑稽な矛盾こそは現代の英吉利だ!――銅版画の古城からきこえてくるエイル・ブルウの舞踏《ステップ》、英文学の古本にこぼれた混合酒《カクテル》のにおい、牛肉と山高帽・牛肉と山高帽。そして、above all ――テムズを撫でる粉炭の風。
いまの倫敦《ロンドン》は、町も人も、人のこころもあまりに横にひろがり過ぎている。絵と詩と、文学と音楽と天才と革命よ、このろんどんを見捨てよ!
街上、よく見かけるもの。
松葉杖。脚部に故障のある人――片足長い、あるいは短い――等。ひげの生えた女。肥った老婆。しるく・はっとと晴天の洋傘《コウモリ》。ブウツの薬屋。ライオン食堂。ABC――炭酸瓦斯麺
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