トいるのだ。まして人と人――西のこころと東のこころ、と言ったようなことを、ともすると私は重苦しく考えている。が、都会の散歩者はもっと伊達《だて》で噪狂でなければならない。私も洋杖《ステッキ》を振って頭を上げよう。そして、レンズのようにうつろになって、この近代商業のバビロンを映して行こう。
英京ろんどん――その age old な権威ある凝結のなかに、低いビルデングと国家的記念像・電車とGENERALの二階つき乗合自動車・市民と市民の靴、これらすべてが現実に地球の引力を意識して、おのおのその完成せる社会制度上の持場にしたがい、感心なほど静止したり這《は》いまわったりしている。ここでは、何もかもが「完成せる社会制度上の定律」によって、工場の調べ革のように滑《なめら》かに運転するのだ。銀行の小使は、銀行の小使としての社会的地位とその役目《ファンクション》を知る事において「紳士」であり、犬は、犬としての社会的地位とその役目《ファンクション》を知る知らないによって「紳士」もしくは「淑女」の犬か、そうでない「普通《コンモン》の犬」かが別れ、時計がとまっても犬が走っても、議会と商業会議所と新聞と牧
前へ
次へ
全66ページ中43ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング