、ことに一決し、こわれた皿のかけらを全部あつめて、これと寸分違わないものを拵《こしら》えるようにとはるばる日本の一名匠へ註文したのだった。と、驚いたことには、早速出来上って送ってよこした。主人公は大満悦、たいへんな期待で包みを解いてみると――出て来たのは、色から模様から「時代」まで元品《オリジナル》とすこしも変らない皿――ではあったが、見本に送ったこわれた皿と完全に同じに、それは一枚分の新しい皿の破片で、べつに手紙がついていた。
「ずいぶん骨が折れ候《そうら》えども、仕事はかなり細かきつもりに御座候《ござそうろう》。ちなみに見本の皿破片全部別送|仕候《つかまつりそうろう》あいだ、なにとぞ新品とお較《くら》べのうえ御満足をもって御嘉納下さるよう願上げ候。頓首。」
 主人は、のこりの十一枚のうえへ思いきりよく卒倒した――というのがおち[#「おち」に傍点]だが、もちろん、これは、日本人は真似が上手すぎてこんなに融通が利《き》かないということを言いたいつもりなんだろうけれど、いぎりす製の莫迦《ばか》ばなしだけあってどうも狙いが外《はず》れていてぴったり[#「ぴったり」に傍点]来ない。気の毒だが
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