−tack といって、その場になって刻々移る一般の人気によって激しく上下する馬金率を報《し》らせあっているのだ。そこでもここでも襯衣《しゃつ》一まいの男が人の海のうえに不可思議な白日のふぁんたしあ[#「ふぁんたしあ」に傍点]を踊っている。これで見るみる値段が変って行き、それもブッキイによって色いろに違うので、すこしでも割のいいブッキイで賭けようとあって、男も女もお婆さんも、お金と鉛筆を握り、血相かえて右往左往している。一番にでも二番へでも賭けられて、その上いろんなふうに組合せがつくんだから、これがじっさいになるとなかなかややこしい。あまつさえ、ロンドンとその近くのすべての町が今日はすっかりからっぽ[#「からっぽ」に傍点]になるほどの人出だ。馬みたいに鼻の穴の大きなグウズベリイ伯爵が、灰色の山高帽に双眼鏡といういでたち[#「いでたち」に傍点]で全家族を引きつれて悠歩していくとあとから、百貨店の売子が、これも灰色の山高帽に双眼鏡といういでたちで――蘇国高地人《スカッチ・ハイランダア》の笛と、その妻のキルト踊り・茶店・道化役・パイナップル売り・れもねえど・早取《はやとり》写真・歌留多《かるた
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