から電報で加入を申込んで、なんらの勝算なしに走らせてみたのだそうだが、それが思いがけなくもこんなことになって、卿もフェルステッドじしんも心《しん》からびっくりしている。そのびっくりしている現場が写真にとられて、次《つ》ぎの日の新聞に出ているのを私が見たんだから確かだ。が、これはまあいいとして、もう一人の利得者は一たい誰か? というと、何をかくそう、印度《インド》の――そして印度にいる――一赤んぼ――唐突にも――であった。では、そもそもどうして印度の赤ん坊が――となると、私は疑う。いくら予言者の産地|印度《インド》の赤んぼにしろ、どうも赤ん坊が自分でえらんで賭けたものではあるまい。これは私が思うんだが、きっと父親が、フェルステッドの勝利を夢にでも見て、赤んぼの名で印度から賭金を電送したのだろう。大金と言わるべき程度のものだったから、それが二十五倍になって返って、こんにちここに集まった大群集――私達とナオミ・グラハム夫人およびブリグス青年をも入れて、は、ただ単に一日こんなに逆上して、その献金により、遠隔の地|印度《インド》に、ひとりの小さな黒い成金を作製したに過ぎない、という結果になってし
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