ドかフラミンゴさ。』
『ねえ、ことしのダアビイじゃあ――。』
『あら嫌《いや》だ! もう判《わか》ってるじゃないの。フラミンゴか、さもなけりゃキャメルフォウドよ。』
なんかという騒ぎ。これを私が不幸にも小耳にはさんでいたので、今回にかぎり大事をとって独特の馬名判断法を廃し、その素晴しい人気《フェイヴァ》の二匹の馬をふたりのあいだに分けて、私はフラミンゴをとり、彼女はキャメルフォウドへ、各二|磅《ポンド》ずつ賭けた――ところが! 馬運つたなく、両頭ともに後塵を拝して、フェルステッドという余計な馬が一着をしめてしまったから、私たちもぺちゃんこだ。これでけち[#「けち」に傍点]がついたとみえてあとの三回も負けつづけ、ひと頃は一攫《いっかく》七十金も領していたのが、あとでしらべてみると、とどのつまり三|志《シリン》ばかりの損だった。このフェルステッドなる怪馬にはみんながやられたらしく、一同かぎりなく口惜《くや》しがっていた。ただ、私の知っている範囲では、これによって一財産つくった人が世界にふたりある。ひとりは、言うまでもなく馬の所有主ユウゴウ・カンリフ・オウエン卿で、卿は、二、三日まえに田舎
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