て、ナオミ・グラハム夫人は兄が賭人《ブッキイ》をしているのでいろいろ玄人《くろうと》の予想《テップ》が貰えるけれど、私たちは馬の名によって第六感に訴えるほか仕方がない。名前の気に入ったやつを賭けるのだ。この姓名判断もあんまり莫迦《ばか》にならない証拠には、私は、これで第一回のランモア競馬に「|王様の行列《キングス・パレイド》」というのへ――名まえがいいから――二|志《シリン》賭けたら二十対一で二|磅《ポンド》――二十円ばかり――儲け、つぎのウォリングトン競馬にもこの方法により、こんどは彼女が「雷風《サンダア・スコウル》」で約五十円勝ち、大得意でいよいよダアビイになったところが――ここで私は思い出した。
きょうの六月六日が迫るにつれてこの二、三週間というものは、電車に乗っても料理屋《レストラン》へ行っても町を歩いても、車掌は切符をきりながら、給仕人は皿を運びながら、通行人は自動車に用心しながら、cat も spoon も、
『ダアビイには何が勝つでしょうね?』
『さあ――まずフラミンゴかキャメルフォウドでしょうな。』
『ダアビイは君、どの馬だと思う?』
『きまってらあな。キャメルフォウ
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