聖書。晴天にも洋傘《こうもり》。日曜日には、猫が走っても犬が吠えても、顔をしかめて「OH! MY!」
生れはボストン。女学校評議員。教会伝道委員長。州政廓清期成同盟実行委員。ポウランド孤児救済会長。その他、短いスカアトを禁ずる運動。等々々の提唱者。
このリジイ伯母さんには、必ず大学へ通っている若い姪があって、伯母さんは、一年に二、三度は寄宿舎に女学生の姪を襲撃することになっている。だから、昔はよく女学生が電報――例の黄色いウエスタアン・ユニオン鐘組織《ベルシステム》の紙片――を手にして、校庭《キャンパス》の隅でしょげ[#「しょげ」に傍点]返っていたりすると、同室の仲間なんかが訊いたものだ。
「あら、ノウマさん、また田舎から伯母さんがいらっしゃるの?」
と、ノウマは泣き笑いの顔を上げて、かすかに頷首《うなず》いたりするのが定則《ていそく》になっていたが、ところがこのごろは!
姪のノウマ、伯母リジイの来襲を少しも恐れない。「アスユク」の電報をうけとるが早いか、彼女は寄宿舎じゅうをかけまわって、伯母さんをして眉をひそめしむるにたるあらゆる書物を借りて来て、それをずらりと炉棚《ろだな》
前へ
次へ
全16ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
谷 譲次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング