や机の上に立てかけておく。おまけにあわてて部屋を掃除するかと思いのほか、みんなの手を借りていっそうちらかし、コーヒー茶碗に靴下留《ガアタア》がはいっていたり、エマアソンス・エッセイスに肌着《シミイ》がかぶさっていたり、賛美歌の上に煙草の吸殻をおいたり――そしていよいよ伯母さん到着の時刻になると、ジャズのレコオドをかけて「甘い接吻《キス》ほどあとが苦いよ、O! BOY!」
のみならずノウマ自身は、一ばん短い着物を着て書き黒子、映画の妖婦を気どって腰にしな[#「しな」に傍点]をつくりながら、喫めない煙草をふかしているところへ伯母さん入御。
伯母、呆《あき》れて無言。部屋じゅうをじろじろ見回す。と、つかつかと炉棚の机の前に行き、まず蔵書をしらべにかかる。
ノウマの借りあつめて来た本は、
エリナア・グリン著「恋の一週間」
アリス・コリンス著「恋の三週間」
ノウスウェル博士著「これだけは心得おくべし――結婚前の処女のために」
「性の神秘」
「蜜月旅行記」
「近代舞踏十二講」
このとき、ノウマの声は落ちついていた。
「伯母さん、あたしずいぶん骨を折って手に入れたのよ。だって発売禁止の
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