を認むるものにして、初めて與《とも》に美的生活を語るべけむ。
七 時弊及び結論
吾人の言甚だ過ぎたるものあるが如し。然れども讀者よ、時弊に憤る者の言はおのづから是の如くならざるを得ざる也。
何をか時弊と云ふ、吾人は是を數ふるの煩はしきに堪へざる也。夫《か》の道學先生の説く所を聞かずや、何ぞ其の拘々として缺々たる。彼等は、人の作りたるものを以て、天の造りたるものを律せむとするものに非ずや。處に隨うて變易すべき道徳に附與するに、萬能の威權を以てせむとするものに非ずや。彼等旦暮に叫んで曰く、爾の義務を盡し、爾の權利を全うせよと。彼等の所謂る義務とは、借りたるものを返すの謂に非ずや。彼等の所謂る權利とは、貸したるものを收むるの謂に非ずや。然れども人生の歸趣は貸借の外に超脱するを如何せむ。又|夫《か》の學究先生の訓ふる所を聞かずや、何ぞ其の迂遠にして吾等の生活と相關せざることの甚しき。知識は吾人の歎ずるところ、然れども知識其物に幾何の價値かある。宇宙は畢竟疑問の積聚也、人は是の疑問の解決を待つて初めて安じ得べくむば、吾人寧ろ生なきを幸とせむ。野の鳥を見よ、勞《はたら》かず、紡《
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