一切引き受けて下さるというおつもりのようだが、そんなことまでも引き受けてやって下さるのでしょうか」
「そんな細々《こまごま》したことまで、私は平尾さんから聞きませんでしたが、一切、高村さんには面倒をかけず、万事を自分の方でする。高村さんはただ、身体だけを新しい家へ持ち運べば好いのだというのですから、無論何もかも一切|背負《しょ》う気でお出《い》ででしょう。それは承知の上のことでしょう」
「そうですか。そういうことならお世話になっても好《い》い気がします」
「では御承知下さいますね。平尾さんもさぞ張り合いがあるでしょう」
といって後藤君は帰りました。
しかし、私は平尾氏の思惑《おもわく》についてもまだ半信半疑でいました。世間によく人の世話をするという人があっても、今のような世話の仕方はほとんど例のないことのように思われますから。
ところが、平尾さんの方では早速家を探し初めた。
私には手間を掛けないというので、店の人たち、後藤君などに頼んで私の住居として格好な家を探し始めたのです。無論平尾さんの主意は家と地所と一緒で、地所が自分のものでないということは落ち附きのないことで、地所ぐるみ
前へ
次へ
全10ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
高村 光雲 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング