幕末維新懐古談
初めて家持ちとなったはなし
高村光雲
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)小町水《こまちすい》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)その頃|馬喰町《ばくろうちょう》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)おひま[#「ひま」に傍点]
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ここでまた話が八重になりますが、……その頃|馬喰町《ばくろうちょう》の小町水《こまちすい》の本舗の主人に平尾賛平氏という人がありました。
今日《こんにち》の平尾家はその頃よりも一層盛大で、今の当主は二代であるが、先代の賛平氏時代も相当な資産家で化粧品をやっていました。この平尾氏が、どういう心持であったか、私のことを大変心配をしてくれているということであった。私の方ではさっぱりそういうことは知りませんでしたが、私とは関係の浅からぬ後藤貞行君を通じて右の趣を承知したのであった。
後藤君のいうには、
「平尾さんが、あなたのことを大変気に掛けていられる。娘を亡くして気を落としたりしたあげく、残暑の酷《きび》しい中の野天で、強い仕事をしたりして暮らしていてはさぞ大変なこ
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