よりも、もう一つ変に思ったことは、今日お呼び出しを受けて出頭した人々の顔触れを見ると、いずれも七十以上の高齢者であって、若い方でも六十以下の人はない。それにもかかわらず、石川氏と自分とはまだ四十歳そこそこという若い者……今日ではもはや私もおじいさんでありますが……この両人《ふたり》の若い者が、これらの老大家の中へ這入っているということはどういう訳だろう、妙なことだと思いました。
かれこれする中に一人一人ずつ呼び出されました。一番初めには狩野老人の代理。次が確か橋本先生。それから夏雄先生というような順序であったと思う。……一同が元の席に就《つ》くと、皆が帝室技芸員というものを拝命した辞令を持っておりました。そうして手当《てあて》として年金百円を給すというもう一枚の書附《かきつけ》と二枚……これで一同は帝室技芸員という役を拝命したのだということは分りましたが、さて、その役目がどんなことをするのか、誰にも分りませんので、誰いい出すとなく評定《ひょうじょう》が初まりました。
「一体、この帝室技芸員というのは何んでしょう。月に一度とか二度とか宮内省の方へ勤めるのでしょうか。何も勤めをせずにお手
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