しに預かった人々が出頭致しておった。……しかし、それは少数で橋本雅邦先生より、もっと、ずっと年を老《と》った狩野永悳《かのうえいとく》先生という老大家、この人はその頃根岸に住まっていて、八十以上の高齢であったから、出頭するに不自由であったか、代理の人が出ていた。それから、加納夏雄《かのうなつお》先生、この方《かた》も私などから見れば遥《はる》かな年長者。それに石川光明氏。私というような顔触れであった(京都の方で鋳金家の秦蔵六《はたぞうろく》氏も当日お呼び出しになるはずであったのであるが、ちょうど数日前に物故《ぶっこ》されてこの日出頭が出来なかったのであるということを後に到《いた》って承りました。その他の方々はちょっと忘れました)。私たちは宮内省の控え室へ集まっていたのでした。
すると、加納夏雄先生が、
「今日の御呼び出しは何んでしょうなア」と私たちに聞いていられましたが、誰も何んの御用かということを答えるものもありませんので、一同妙に気掛かりなような心持で腰掛けていたようなわけで、その席に臨んでいても、まだ何んのことか見当が附かなかったようなわけであった。
それに、私としては、それ
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