《やまたか》さんの手前の所です。馬見場(以前|不忍池《しのばずのいけ》の周囲が競馬場であった頃、今の勧業協会の処にあった建物)から向うへ廻ると二、三軒で冠木門《かぶきもん》の家《うち》がそれです。承知不承知はとにかく岡倉さんに逢ってよく同氏の話を聞いて下さい。私は今日は都合があって、御同席は出来ませんが万事よろしく……」
といって竹内氏は帰られました。
それから、午後四時頃私は出掛けて行った。岡倉氏に面会すると、同氏は私の来訪を待っていた所だといって、「今日、竹内氏をもって御願いした件はどういうことになりましたか」
という。私は竹内氏に答えたことと同じ意味のことを答えますと、
「高村さん、それはあなたは考え違いをしていられる。学校をそうむずかしく考えることはいりません。あなたは字もならわない、学問もやらないから学校は不適任とおいいですが、今日、あなたにこの事をお願いするまでには私の方でも充分あなたのことについては認めた上のことですから、そういうことは万事御心配のないように願いたい。あなたに出来ることをやって頂こうというので、あなたの不得手なことをやって頂こうというのではありません。
前へ
次へ
全15ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
高村 光雲 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング