す。浜尾新《はまおあらた》氏が校長で、岡倉さんは幹事です。この美術学校というのは日本画と彫刻とで立っているので、岡倉さんがあなたに来てもらいたいという主意はその木彫《もくちょう》の方の教師になってもらいたいというのです。岡倉さんもいろいろこの事については考えたが、どうも他に適当の人がない。それで是非あなたに這入ってもらって一つ働いて頂こうということになったのだから、これは一つ否《いや》が応でも引き受けて頂かねばなりません」という話であった。

 これで一通り事情は分ったが、さて、私に取っては困ったことであった。
「そうですか、私はちっともそういう学校の出来ていることを知らなかった。今のお話でよく訳は分りましたが、どうも私はそういう学校というような所へ出て教師の役をつとめるなどということは私には不向きだと思います。つまり、私はその衝に当たる人でないと思います。家にいて仕事をして傍《かたわ》ら弟子を教えることなら教えますが、学校というようなことになると私には見当が附きません。御承知の通り、私はそういう生《お》い立ちでありませんから……なまじっか、柄にないことに手を出して見た処で、自分も困る
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