種また別のものですから、その方へ相談をしたらよろしかろうというのでありました。それではその方へ話をしてくれまいかと頼むと、早速引き受けて友達を伴《つ》れて来てくれました。

 私はそのカヤ[#「カヤ」に傍点]方の仕事師という男に逢って見ました。
 私の肚《はら》の中では、この男に逢って雛形を見せたら、恐らくこれは物になりません、というだろうと思っておりました。もし、そういってくれたらかえって私には好《よ》かったので、この話はそれで消えてしまう訳。もしそうでもないと、話が段々大きくなって大仏が出来るとなると、私の責任が重くなる。興業物としての損益は分りませんが、もし損失があっては資本を出す考えでいる野見さんに迷惑が掛かることになります。どうか、物にならないといってくれれば好《い》いと思って、その男に逢いますと、仕事師は暫く雛形を見ておりましたが、
「これはどうも旨いもんだ。素人《しろうと》の仕事じゃない。この梯子《はしご》の取り附けなどの趣向はなかなか面白い。私どもにやらされてもこう器用には出来ません」
といって褒《ほ》めています。それで、これを四丈八尺の大きさに切り組むことが出来るかと
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