訊《き》くと、訳はないという。この雛形ならどんなにでも旨く行くというのです。そして早速|人足《にんそく》を廻しましょう、といっております。その男の口裡《くちうら》で見ると、十日位掛かれば出来上がりそうな話。野見さん初め他の友達もこれでいよいよ気乗りがして来ました。

 しかし、この仕事はカヤ[#「カヤ」に傍点]方の仕事師ばかりでは出来ません。仕事師の方は骨を組むのでありますが、この仕事は大工と仕事師と一緒でなければ無論出来ません。そこで大工を頼まなければならないので誰に頼もうという段になったが、高橋氏が、私の兄に大工のあることを知っているので、その人に頼むのが一番だという。なるほど私の兄に大工があるが、しかしこういう仕事を巧者にやってのける腕があるかどうか、それは不安心、けれども、いやしくも棟梁《とうりょう》といわれる大工さん、それが出来ないという話はない、漆喰《しっくい》の塗り下で小舞貫《こまいぬき》を切ってとんとんと打って行けば雑作もなかろう。兄さんを引っ張り出すに限るというので、私もやむなく兄を頼むことに致しました。
 そこで、兄は竹屋から竹を買い出して来る。千住《せんじゅ》の大
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