になって来ましたが、大仏の例の螺髪《らはつ》になると、ちょっと困りました。俗に金平糖《こんぺいとう》というポツポツの頭髪でありますが、これをどうやって好《い》いか、丸太を使った日には重くなって仕事が栄《は》えず、板ではしようもない。そこで、考えて、神田の亀井町には竹笊《たけざる》を拵える家が並んでおりますから、其所《そこ》へ行って唐人笊《とうじんざる》を幾十個か買い込みました。が、螺髪の大きい部分はそれがちょうどはまりますけれども、額際《ひたいぎわ》とか、揉《も》み上げのようなところは金平糖が小さいので、それは別に頃合《ころあ》いの笊を注文して、頭へ一つ一つ釘《くぎ》で打ち附けて行ったものです。仏さまの頭へ笊を植えるなどは甚だ滑稽《こっけい》でありますが、これならば漆喰の噛《かじ》り附きもよく、案としては名案でありました。
「やあ、大仏様の頭に笊が乗っかった」
などと、群衆は寄ってたかって物珍しくわいわいいっております。突然にこんな大きなものが出来出したので、出来上がらない前から人々は驚いているという有様でありました。
或る日、私は、遠見《とおみ》からこれを見て、一体どんな容子に見
前へ
次へ
全18ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
高村 光雲 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング