事場へ行かねばならなくなった訳であります。が、毎日高い足場へ上って仕事師、大工たちの中へ這入って仕事をしていますと、なかなかおもしろい。面白半分が手伝って本気で汗水を流して働くようになりました。今日では思いも寄らぬことですが、まだ歳《とし》も若し、気も旺《さか》んであるから、高い足場へ上って、差図《さしず》をしたり、竹と丸太を色々に用いて頤《あご》などの丸味や、胸などのふくらみを拵えておりますと、狭い仕事場で小仏を小刀の先で弄《いじ》っているとはまた格別の相違……青天井の際限もない広大な野天の仕事場で、拵えるものは五丈近い大きなもの、陽気はよし、誰から別段たのまれたということもなく、まあ自分の発意《ほつい》から仲の善《よ》い友達同士が道楽半分にやり出した仕事ですから、別に小言《こごと》の出る心配もなし、晴れた大空へかんかんと金槌《かなづち》の音をさせて荒っぽく仕事をするので、どうも、甚《はなは》だ愉快で、元来、罷《まか》り間違えば自分も大工になるはずであったことなど思い出して独《ひと》りでに笑いたくなるような気持にもなったりしたことでありました。
段々と仕事の進むにつれて、大仏の頭部
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