か》、雉子《きじ》、鴛鴦《おしどり》、鶴、鶉《うずら》など……もう、それぞれ諸家の手で取り掛かったものもあり、また出来掛かっている物もあるのだという。日本の鳥の中でも製作しておもしろそうなものは、もうそれぞれ手が附けられている。自分の手に掛けてやるとして、さて、どの鳥をやったものか。私も即座では当惑しましたが、ふと、思い附いて、鳥として西洋人に示しておもしろい題になるものという考えから矮鶏《ちゃぼ》はどうかと思いました。矮鶏はちんまりして可愛らしい形……木彫りとして相当味が出そうに思われる。それに、もう一つ軍鶏《しゃも》も面白いと思った。
 矮鶏の温柔なちんまりした形に対して、軍鶏の勇猛な処を鑿打《のみう》ち半分で、かさかさと荒けずりの仕事を見せると、形の上からも矮鶏の軟らかさに対して剛柔の対比にもなるし、また、仕事の上では粗密とか強弱などの調和も見せられる、これは話して見ようと思い、その事を話すと、
「それはどうもおもしろい。それは名案だ。一つやって下さい」
と若井氏は非常に乗り込んで来ました。
 そうして、矮鶏のようなものを木彫りにしてはさぞ骨が折れることであろうが、そこを一つ是非
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