国のことで観《み》る人の目も高いから、もし、拙劣《つまら》ないものを出しては第一自分の店の名に係るので、算盤《そろばん》ずくでなく傑《い》いものばかりを選り抜くつもりで、一つヤンヤといわせる目論見《もくろみ》であるのだが、それには一趣向あるので、自分の案としていろいろ考えた結果、日本の鳥を主題にして諸家に製作を頼んだのである。これは日本の美術を代表しようと思ってもこれといって題材としておもしろいものがないが、ただ、日本の鳥だけは出品になりそうなので、そう思いついたわけである。で、蒔絵、焼き物、鋳物、象牙、……何んでも鳥を題にして製作してもらいましたが、一つ木彫りの方では高村さんあなたが代表して鳥を一つ拵《こしら》えて頂きたい……という注文であった。

 この話を聞いては、私も迂闊《うか》とは手が出せないと思いました。「是非一つやって見て下さい」といわれて「では、やって見ましょう」と軽弾《かるはず》みな返事は出来ない。それに、鳥といって何んの鳥を彫るのか。一応、主人の考えを聞いて見ると、何んの鳥と自分でも考えてはいない、それも決めて頂きたいという。そうして、これまで注文した分には、鷹《た
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