しかし高村の作として出品されているものを、審査しないということも、競技会の性質として工合が悪い。それで審査員の方では一案を考えて、これは我々は傍観態度で、この作の始末は幹部の方へ一任しよう。そうすれば、理事、会長の考えで処置されるであろうというので、幹部へ持ち込んだものですから幹部の山高信離、松尾儀助、岸光景、山本五郎、塩田真、大森惟中諸氏の手に掛かることになりました。
幹部の方々はその事を協議されたことですが、どういう風になったか、私は自分のことでもあり、また審査員の一人ではあるが、まだ年も若しするので、何事も控え目にしているのですから、ただ、傍観していましたが、自分考えでは、なるべくならば審査してくれない方がよろしいと思っておりました。審査の結了の時は、審査員すべてがさらに寄り合って、今一度精選して万一の疎忽《そこつ》のないように審査会議がありますが、その際、万事済んで行った後で、一つ事項が残っている。
「高村のこの作品をどうするか」
という問題。
「どうするといって、既に出品した以上、競技会だから審査せんという訳には行くまい。それに故人でもあることならとにかく、現存でまだ年も若
前へ
次へ
全12ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
高村 光雲 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング