すと、それは差し閊《つか》えないだろうとの事であったので、とうとう競技会へ製作が持ち出されることになったのでした。
こういうことは皆他のしたことで、私は、出された方が好《い》いものか、悪いものか、最早製作は済んで彫工会へ渡したもので自分の自由にはならない。とにかく同会の幹部たちが出せというので陳列することになりました。
会場の中でも大きな四方|硝子《ガラス》の箱の扉《とびら》をはずして真ん中へ敷き物を敷いて四ツの狆を陳列《なら》べました。数が四つというので、見栄《みばえ》がする。見物が大勢それに簇《たか》ってなかなか評判がよろしかった。
この競技会の審査員は学芸員の人々また、実技家の主立《おもだ》った人々で、私もその一人でありました。で、いよいよ審査することになると、審査員は困りました。この作品は高村が競技的に自分の作を出したのでなく、彫工会が出品したのであって、御造営の方からの命令で出来た品であるから、それを審査するというはどんなものかというのが頭痛になったのであります。で、問題になると面倒臭いから、これだけは避《よ》けた方が好かろうという審査員たちの考えもあったことと見える。
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