幕末維新懐古談
四頭の狆を製作したはなし
高村光雲
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)先《せん》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)四方|硝子《ガラス》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)かね[#「かね」に傍点]勾配
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いよいよ狆の製作が出来ました。
先《せん》のと、それから「種」のモデルの方が三つです。一つは起《た》って前肢《まえあし》を挙げている(これは葉茶屋の方のです)。一つは寝転んでいる。一つは駆けて来て鞠《まり》に戯《じゃ》れている。今一つは四肢《よつあし》で起っている所であった。この四つの製作はいずれも鋳物の原型になるのであるから、材料を特に木彫りとして勘考することもいらぬので、私は檜で彫ることにしました。いうまでもなく、檜の材はなかなか鑿や小刀を撰むもので、やわらかなくせに彫りにくいものですが、材としては古来から無上のものとなっている。荒けずりから仕上げに掛かり、悉皆《すっかり》出来上がって、彫工会へ納めました。
木型が出来ましたので、大島如雲氏はそれを原型として鋳金にしましたが、
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