の中に葬ろうとして、どっちつかずの態度を取ることになった。つまり谷中派の組合をも確実に認定せず、先生側の意見書をも取り上げぬといった形になったのである。こうなると金田氏の案は立派に成功したことになって先生側の方の一同はいずれも大喜びで、もはや谷中派の組合に這入る這入らぬを間題にする必要もなくなり、同時に谷中派が組合の権能を振り廻す権利を認める必要もなくなりました。
「組合は組合で放棄《うっちゃ》って置け、彼らの書いた種が上がれば、相手にする必要はない。文句をいって来たら、人名録を突き附けて先方の落ち度を抑えてやれば好い。放棄《ほう》って置け放棄って置け」
というようなことで、先生側の意気は大いに振《ふる》ったわけでありました。

 こうなって来ると、形勢が逆になって来た。技術派の方へ加担をするものがかえって多くなって、同情が高まり、旭玉山、石川光明氏等へ味方するものが簇々《ぞくぞく》と出て来ました。今までイヤイヤながら組合へ盲従していたものも脱けたり、思案しておったものは急に活路を見出したようにこっちへ附いて来るようになりましたから、谷中派の方は急に気勢が挫《くじ》け、人数が減り、看板
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