も出来る訳で、結局、人名録が証拠になって立派に反抗するだけの材料となり、物をいうことになろうと思うのですが如何でしょう」という意味を申し述べました。なるほど、これは至極|宜《い》い案であるから、人名が多いか、些《すく》ないか、精細に調べさせて見ようと相談はたちまち一決して早速人名録作成の人に補助することにして、至急人名調査に取り掛かったのでありました。
そこで精細に調べ上げた人数を見ると、四百何十人約五百名という数である。谷中派が三百人と見て、三分の二の二百人を糾合して組合を組織したことは、百何十人かを無視したという事実が上がって来ました。人名録も出来上がって、ずらり宿所氏名の人別《にんべつ》が立派に乗っている以上、これほど確かなことはない。そこで、府の当局者が許可すべからざるものを許可したのだという抑《おさ》え所も出来たので、それでは府の掛かりをねじってやれというので、人名録を附けて意見書を府の掛かりの課へ突き出したのでした。
これには掛かりの人も一本参った。しかし、一旦、許可したのを、今さらむげ[#「むげ」に傍点]に解散させるというわけにも参らぬので、事を有耶無耶《うやむや》
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