を手にした一流側の人々は大いに面喰《めんくら》ったわけでありました。しかし、旭玉山氏や石川光明氏とか、島村俊明、田中玉宝氏などいう人たちは名人|肌《はだ》な人で、別にこういう世間的のことには一向関係しないので、平生から自分の腕だけのものを作り、気位は高く、先生気取りの人たちであるから、ただ、変なことが初まったものだと思う位であるが、他には、そういう人ばかりでもないので、まず谷中派の人たちに出し抜かれた形で、一体これはどうしたものかと問題になったのであります。
元来、谷中派と先生派とこれに属する技術家とは技術に対する心掛けが違っているのであるから何にもこの際、弟子側のものを圧迫する必要も感じないし、またいろいろな規約の中に押し籠められる因縁もないと思っている。いわばなるだけ面倒な事には関係しないで仕事に励み忠実熱心である方ですから、こういう不条理な規約書が郵便で、各自《てんで》の許《もと》に舞い込んで来て見ると、甚だ迷惑に感じた。もし、不賛成を唱えるとなると、市中で職業が出来ないという。郊外へ退いて行かねばならないとなると、これは差し当って考え物である。さてそれが困るからといって規約
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