って、それが型となって、貿易向きのマッチ入れとか、灰皿とか、葉巻入れ、布巾輪《ふきんわ》、たばこ差し、紙切り、砂糖|挟《ばさ》み、時計枠など、いろいろ外国向きの物品を作るのだが、それを一つあなたの意匠を凝らし、絵師の手を借りずに、ジカ附《づ》けに彫って頂こう。そうする方が出来が生きて面白く、同じ金属で打ち出したものでも値打ちがあるというもの、一つ自由に腕を振《ふる》って見て下さい」という注文、そこで、いろいろな用途の器物の見本を見ると、なかなか興味があります。私もこうした新しい試みには以前から気があるのであるから、
「では、どういうものが出来るか、一つ行《や》って見ましょう」
と、引き受けて帰りました。
私の仕事はやはり金型《かながた》をヘコサ[#「ヘコサ」に傍点]に彫《ほ》る工人の手本になるので、その意匠を考え考えして種々な用途の器具の内面または外側に、旨《うま》く意匠づけたものを彫るのであるから、なかなか仕事に骨は折れますが張り合いがある。自分の意匠づけた一つの型が原《もと》になって幾万の数が出来て、それが外国へ行くということも考えようによっては面白くもある。そんなような訳で、私
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