幕末維新懐古談
貿易品の型彫りをしたはなし
高村光雲
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)暫《しばら》く
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)神田|旅籠《はたご》町
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ヘコサ[#「ヘコサ」に傍点]
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それから、また暫《しばら》くの後、或る日私が仕事場で仕事をしていると、一人の百姓のような風体《ふうてい》をした老人が格子戸《こうしど》を開《あ》けて訪《たず》ねて来ました。
その人は、チョン髷《まげ》を結って、太い鼻緒《はなお》の下駄《げた》を穿《は》き、見るからに素樸《そぼく》な風体、変な人だと思っていると、
「一つ彫刻を頼みたい」という。
「木で彫る方の彫刻なら何んでも彫りましょう」
と答えると、
「それは結構、では今夜私の宅へ来て下さい。能《よ》く御相談をしましょう。私は神田|旅籠《はたご》町の三河屋幸三郎《みかわやこうざぶろう》というものだ」
こういい残して帰りました。どういう人物か知らないが、とにかく、約束通り、私は、その宿所へ訪ねて見ると、それはなかなか立派な構え
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