眼鏡屋にて聞き込み、右の老婆を頼んで、主人を※[#「てへん+(「縻」の「糸」に代えて「手」)」、141−14]らせた処、大きによろしいという。それを女同志のことで、こちらの奥の人たちが勧められたものか、自分たちでその気になったか、とにかく、その婆《ばば》さまに師匠を見せるということになった。私はこの話を聞くと、これはいけないと思いました。断じてこの際、そういうことをさせることは無謀の至りで、これは険呑《けんのん》至極と思いましたが、前にも申す如く、奥の婦人たちに向って強《た》って口を入れて我意を張り通すことも、とにかく、元、私が医師を世話した関係上、私としては言い兼ねもしたので、まず、やむをえず奥の人たちのいう通りに従いました。
婆さまが来て師匠をさすりました処、師匠は加減がいくらか好いようだということ、本当に好いのか、ほんの病人の気持だけでそう思われるのか、私は半信半疑でいると、さて、さらに困ったことには、その婆さまのいうには、自分が病人を手掛けている間は、医師の薬を廃《や》めてくれということ、これは眼鏡屋の方でも同じことであった。しかし医師の薬をやめるわけには医師に対していかな
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