幕末維新懐古談
東雲師逝去のこと
高村光雲

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)相更《あいかわ》らず

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)下谷区|入谷《いりや》町

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+(「縻」の「糸」に代えて「手」)」、141−12]《さす》る
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 それからまたこういう特別な注文のほかに、他の仕事もぽつぽつあります。それらを繰り返して仏の方をも相更《あいかわ》らずやっている。明治十一年も終り、十二年となり、これといって取り立ててはなしもないが、絶えず勉強はしておりました。
 すると、十二年の夏中から師匠は脚気《かっけ》に罹《かか》りました。さして大したことはないが、どうも捗々《はかばか》しくないので一同は心配をいたしました。余談にわたりますが、師匠東雲師は、まことに道具が好きで、仏の方のことは無論であるが骨董《こっとう》的な器物は何によらず鑑識に富んでおりました。それで東京中の道具屋あさりなどすることが
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