ければ無論出来ません。そこで大工を頼まなければならないので誰に頼もうという段になったが、高橋氏が、私の兄に大工のあることを知っているので、その人に頼むのが一番だという。なるほど私の兄に大工があるが、しかしこういう仕事を巧者にやってのける腕があるかどうか、それは不安心、けれども、苟《いや》しくも棟梁といわれる大工さん、それが出来ないという話はない、漆喰の塗り下で小舞貫を切ってとんとんと打っていけば雑作《ぞうさ》もなかろう。兄さんを引張り出すに限るというので、私もやむなく兄を頼むことに致しました。
そこで、兄は竹屋から竹を買い出してくる。千住の大橋で真中になる丸太を四本、お祭の竿幟《のぼり》にでもなりそうな素晴しい丸太を一本一円三、四十銭位で買う。その他お好み次第の材料が安く手に入りました。そこで大工の方で、左官に塗らせるまでの仕事一切を見積って幾らで出来るかというと(無論仕事師の手間賃も中に入っていて)、百五十円でやれるということです。それで、兄の友達の左官で与三郎という人が下谷町にいるので、それに漆喰塗りの方を頼んで貰いました。
黒漆喰で下塗りをして、その上に黒に青味を持った丁度大
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