向は……名案じゃありませんか」
高橋氏がいいますと、
「左様ですな。趣向は至極賛成です。だが、いよいよやるとなると、問題は金ですね、金銭《かね》次第だ。親父《おやじ》に一つ話してみましょう」
野見氏は無口の人で多くを語りませんが、肚では他の人よりも乗気になっているらしい。私は、当座の思いつきで笑談半分に妙なことをいいましたが、もし、これが実行された暁、相当見物を惹いて商売になればよし、そうでもなかった日には、飛んだ迷惑を人にかけることになると心配にもなりました。
野見長次さんは早速、親父さんにその話をしました。
野見老人は興行的の仕事の味のわかっている人。これは物になりそうだ。一つやってみたいというので、長次さんが老人の考えを持って来て、また四人で、相談して、一応、私はその大仏さまの雛形を作ってみるということになりました(実のところは雛形を作っても大工や仕事師に出来ない。また金銭問題で止めになるに違いないとは思いましたが、とに角、自分でいい出したことだから雛形に掛りました)。
その日は竹屋へ行って箱根竹を買ってきて、昼の自分の仕事を済ますと、夜なべをやめて、雛形に取り掛りま
前へ
次へ
全17ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
高村 光雲 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング