した。見積りの四丈八尺の二十分一、即ち二尺四寸の雛形を作り初めたのです。まず坪を割って土台をきめ、しほん[#「しほん」に傍点]といって四本の柱をもって支柱を建て、箱根竹を矯《ため》て円蓋を作り、そのしほん[#「しほん」に傍点]に梯子段を持たせて、いつぞやお話した百観音の蠑螺《さざえ》堂のぐるぐると廻って階段を上る行き方を参考としまして、漸々と下から廻りながら登って行く仕掛をこしらえて行きました。最初の大仏の膝の処で、次は脇の下、印を結んでいる手の上に人間が出られるようになる。それから左から脇を入って行くのが外から見え、だんだんと顔面へ掛り、口、目、耳へ抜けるように竹をねじって取りつけます。……雛形は出来たがこれは骨ばかり、一寸見るとなんだかさっぱりわからない。変なものが出来ましたが、張子《はりこ》紙で上から張ってみますと、案外、ありありと大仏さまの姿が現われてきました。
「おやおや何をこしらえているのかと思っていたら、大仏様が出来ましたね」
 と家の者はいっております。
「大仏に見えるかね」
「大仏様に見えますとも」
 といっております。大仏が印を結んで安坐している八角の台の内部が、普
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