って行くのが見える。それから内部の階段を曲がりながら登って行くと、頭の中になって広さが二坪位、ここにはその目の孔、耳の孔、口の孔、並びに後頭に窓があって、そこから人間が顔を出して四方を見張らすと江戸中が一目に見える。四丈八尺位の高さだから大概《あらまし》の処は見える。人間の五、六人は頭の中へ入れるようにして、先様お代りに、遠眼鏡などを置いて諸方を見せて、客を追い出す。降りてくると胴体の広い場所に珍奇な道具などを並べ、それに因縁をつけ、なにかおもしろい趣向にして見せる。この前笑覧会というものがあって、阿波の鳴戸のお弓の涙だなんて壜に入れたものを見せるなどは気が利かない。もっと、面白いことをして見せるのです……」
「……そうして切《きり》の舞台に閻魔さまでも躍らして、地獄もこのころはひまだという有様でも見せるかな……なるほど、これは面白そうだ」
「大仏が小屋の代りになるところが第一面白い。それで中身が使えるとは一挙両得だ。これは発明だ」など高橋氏や田中氏は大変おもしろがっている。ところが野見氏は黙っていてなんともいいません。考えていました。
「野見さん、どうです。高村さんのこの大仏という趣
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