なりました。
「左様さ……これといって面白い思いつきもありませんが、何か一つあってもよさそうですね。原の中へこしらえるものとなると、高値なものではいけないが、といってちっぽけな見てくれのないものではなおさらいけない……どうでしょう。一つ大きな大仏さんでもこしらえては……」
笑談《じょうだん》半分に私はいい出しました。皆が妙な顔をして私の顔を見ているのは、一体、大仏をこしらえてどうするのかという顔つきです。で、私は勢い大仏の趣向を説明してみねばなりません。
「大きな大仏をこしらえるというのは、大仏を作って見物を胎内へ入れる趣向なんです。どのみち何をやるにしても小屋をこしらえなくてはならないが、その小屋を大仏の形でこしらえて、大仏を招きに使うというのが思いつきなんです。大仏の姿が屋根にもかこいにもなるが、内側では胎内|潜《くぐ》りの仕掛けにして膝の方から登って行くと、左右の脇の下が瓦灯口《がんどうぐち》になっていてここから一度外に出て、印を結んでいる仏様の手の上に人間が出る。そこへ乗って四方を見張らす。外の見物からは人間が幾人も大仏さまの右の脇の下から出て、手の上を通って、左の脇の下へ入
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