茎の粗い皮を、岩石に擦りつけるようにしている、槲《かしわ》に似て、小さい、鈍い、鋸の歯のように縁を刻んだ葉を、眼醒《めざ》めるように鮮やかな緑に色づけて、その裏面にはフランネルのような白い毛が、おもての緑と対照するために、密やかに布《し》いている、恰度《ちょうど》一枚の葉で、おもては深淵の空を映し、裏は万年雪を象《かたど》ったようである、卵形の白い花が八弁、一寸位の小さい花梗の頭に、同じく八個の萼《がく》を台にして、安住している、同じ日本アルプスでも、他所の長之助草に比べて、花でも葉でも、一と際小さい方であるが、それでも殆んど草原を埋めるばかりに群って、白山一華《はくさんいちげ》や、チングルマなどと交って、岩穴や山稜《リッジ》の破れ目に、咲いている、皺《しわ》のあるところに白い花がある、襞《ひだ》の折れたところに白い花がある、溝の穿《うが》たれたところに白い花がある、白い花が悉《ことごと》く長之助草だとは言わないが、白い花の中に、この花を見ないということはないほどである、大籠山の裏白金梅と、間の岳北岳間の長之助草とは、我らの一行によって確められた、この高山植物の最大産地――今まで知られ
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