つら》え向きな、三間位な平地が出来ている、黄花石楠花、小岩鏡、チングルマ、岩梅などが、疎らに生えている、位置は東を向いて、富士山と対している、南へ向いた断崖には、数条の残雪があるから、溶かして水を獲ることが出来る、時間は猶《まだ》早いが、これからまた峻しい山稜つづきで、適当な野営地が見つからぬかも知れないから、今夜はここで寝ることにした。
 例の天幕《テント》作りに取りかかる、古生層地は白峰までつづき、鳳凰地蔵一脈の間で、深谷にフツリと切れているのが、よく見える、人夫たちは雷鳥三羽を捕獲した、みんなして二羽を醤油飯に、一羽を焼いて喰った。
 霧がまた少し来た、夜になると、甲府市の電燈が黄いろの珠のように、混沌の底から、ボーッと見えた、先刻の汽船といい、この電燈といい、人間に遇わずに、山から山を伝わって、野獣のような生活をつづけていた人々の胸をおどらせた。
 夜も深くなった、焚火がとろとろと消えかかったとき、風が吹いて天幕の油紙が巻くられた、その隙間《すきま》から潜《もぐ》り込んだ風で、焔がパッと燃え上って光ったときは、寐込んだ油断に身体《からだ》に火がついたかと思って、一同夢うつつに駭
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