本地誌の著者山崎直方氏に一読をすすめ置き申候細かき処は猶御面晤の栄を得候時万々申述度候
山嶽小説のこと御たづねにあづかりうれしく候日本には未だ此種のもの無之候へども欧州各国を通し候ても、諾威の山岳国にのみ此種の文学を出せしことも一奇と存候其作数種有之著者ビョルンソンは御存知のごとく、イブセンと諾威文学の牛耳を執り候人、其半期の作物は多くは山岳、或は荒海などを舞台に使ひたるものにして、其人物と言ひ、其配景といひ一種他に見るべからざる野趣を帯び居り、其文章も空霊とでも申すべきか、大に簡にして味ふべきもの有之候其傑作を奉くれば
B Bjornson.
Synnove Solbakken.
Arne.
A Happy boy.
The Bridal March.
などに可有之、ことにアルネは山岳小説の尤も粋を尽したるものに候、先刻は中西屋に其英訳大抵そろひ居り候ひしが、今は如何に候ふや小生大抵所持致し候間、御入用ならば、いつにても御郵送申上べく、大に世間に山岳趣味を鼓吹いたし度希望罷在候
東京にても御出遊の節は是非一度御目にかかり度く存候
且、文庫屡ば御寄贈を辱うし奉謝
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