岩などが露出しているが、シャスタを距《へだた》ること、五十|哩《マイル》位のところから、熔岩が、両岸に段丘《テレース》を作っている。そして段丘の上に、小舎が建てられたり、馬鈴薯や唐黍《とうきび》が植えられたりして、この辺の畑としては、手入れが届いている。その熔岩は、シャスタの南麓から迸《ほとばし》ったのであるが、ちょっと富士山から、桂川に沿うて猿橋まで達しているところの「猿橋熔岩」に似ている。しかし猿橋の方では、熔岩の延長八里ぐらいで、厚さも今日見らるるところでは、四、五|米突《メートル》ばかりの薄い皮であるが、サクラメントへ流れるシャスタ熔岩の厚さは、五十|呎《フイート》から二、三百呎に達している。川上の方へ「シャスタ」が、白い炎を爛々《らんらん》と光らして、汽車の窓から、大抵は右に見えるが、「左富士」のように、左に見えることもある、それほど川は、S字の環を繋《つな》ぎ合っている。前に述べたシッソンの停車場へ着くまでには、ダンスミールという、材木を伐《き》り出すので賑《にぎ》やかな古駅があり、その次には、シャスタ・スプリングといって、シャスタ火山の基盤熔岩なる岸壁の間から、地下の伏流
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