が、富士の白糸の滝のように、千筋《ちすじ》とまでは行かなくとも、繊細な糸を捌《さば》いて、たぎり落ちるところもある、「花茨《はないばら》故郷の路に似たるかな」が、ますます思い出される。
 シッソンという寂しい停車場は、富士ならば、御殿場駅に当るところであるが、この方面から見たシャスタは、一座の尖《とが》れる火山にしか見えない、それが、シャスタの主峰であるが、汽車が北へ廻るに随って、いつの間にか、主峰の傍に、また一つの同じような火山が出て来る、それはシャスチナで、高さは日本の富士山と同じく、一万二千三百尺であるが、シャスタ主峰は、それよりも更《さら》に、約二千尺高く、海抜一万四千百六十二尺と註せられている。火口は、シャスタに一つ、シャスチナに一つ、その双峰《そうほう》を繋《つな》ぎ合わせるところの、プラットフォームにも、一つあるという話であるが、私はそれをよく知らない。シャスチナは、多分側火山として噴出したのが、一体の双生児のように、シャスタと癒合《ゆごう》したのだろうと思う。成立の原因は違っても、富士の愛鷹山《あしたかやま》の頂上部が、仮に爆裂飛散せずに原形を保存していたとすれば、シャ
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